25.12.17
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肝臓を労る生活習慣 Part II
こんにちは、医師の中島です。 前回からの続きで、肝臓を労るおすすめの生活習慣のご紹介です。 食前に水をたっぷり飲む 人体の化学工場である肝臓は、常時大量の水分を必要としています。体内の水分が少ないと、肝臓への血流量が落ちて、代謝が低下し肝臓への負担が大きくなります。 水分不足の悪影響は、それだけではありません。血液中の水分が少ないまま、塩分濃度が高い状態が続くと脂肪が蓄積されやすくなってしまうのです。 これには、人類の生き残り戦略が関係しています。飢餓状態になると、人体には脂肪をためようとするスイッチが入るのですが、脱水状態になったときにも同じスイッチが入ります。 ある実験では、食事の前に300mlの水を飲むグループと、飲まないグループに分けて比較したところ、水を飲んだグループのほうが痩せることがわかりました。 逆に言えば、食べる前に水を飲むと脱水状態が解消され、脂肪をためるスイッチは入らず、同じものを食べても脂肪がつきにくくなるというわけです。 肝臓をいたわり脂肪肝を防ぐためには、食事の前に水を300ml飲むようにしましょう。「ちょっと多いかも」と感じるくらい、たっぷりと飲んで構いません。食事のとき以外でも、お腹が空いたら水を飲む習慣をつける。胃が膨らんで、食欲を抑える効果が期待できます。 私は外来に来た患者さんには、一日に1.5L以上の水を飲むことをすすめています。まず朝起きたら大きいサイズのコップ1杯、昼と夜の食事の前にも1杯飲む。あとはそれ以外の時間にこまめに飲めば、それほど難しくはありません。一日に500mlのペットボトルの水を3本飲むという感覚で始めてみるといいでしょう。 なお、サウナや長風呂が好きな人は特に水分の摂り方には気をつけてください。発汗で体内の水分が減少した状態が続くと、肝臓に負担をかけます。 脱水症状を防ぐためにも、意識的に水やお茶(カフェインなし)を摂るようにしましょう。 100%果汁ジュースをやめる 私は普段の外来で、飲み物から栄養を摂らないように指導しています。飲み物は食事と違ってカウントされないことが多く、余分な糖分やカロリーを摂る原因になってしまうからです。 特に注意が必要なのが、異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)を含む飲み物です。ジュース、スポーツドリンク、甘い缶コーヒー、エナジードリンクなど、いかにも糖分が多そうなものに加え、健康的に見えるスポーツドリンクや乳菌菌飲料、プロテインドリンクなども注意が必要です。例えば500mlのスポーツドリンクのペットボトルの中には、角砂糖10個分ほどの糖が含まれています。夏場に熱中症予防と思ってスポーツドリンクを毎日飲むような生活は脂肪肝の引き金になってしまいます。 一見、体に良さそうな100%フルーツジュースも、食物繊維が取り除かれているため、糖質の吸収が非常に早く、肝臓に負担をかけてしまいます。最近の研究では、果物をスムージーなどにして飲むよりも、そのまま食べたほうが脂肪肝のリスクを抑えられることがわかってきました。果糖は一気に摂取すると脂肪に変わりやすいのですが、15分ごとにゆっくり摂ると小腸での代謝が促進され、肝臓への負担が軽減されるというデータもあります。果物はジュースではなく、そのまま食べるのがいいでしょう。 人工甘味料を使ったカロリーゼロの飲料にも要注意です。現時点では人工甘味料そのものが有害だというエビデンスはありませんが、甘い味は食欲を増進させる効果があるため、食事の摂取カロリーが増えてしまいます。 甘味に頼らず、できるだけ無糖の飲み物を選ぶことが肝臓を守る第一歩です。日常的に飲むのは、水、無糖のお茶、ブラックコーヒーのいずれかにしてください。カフェインを含むお茶やコーヒーは睡眠の質を悪化させる可能性があるため、夕方以降はノンカフェインのものを選ぶといいでしょう。 いかがでしたか? できそうなところから、一つでも多く心掛けて、肝臓を労りましょう。 次回も引き続き、肝臓を労る生活習慣のお話です。 週の中日ですね、一息ついて後半もがんばっていきましょう。

























