こんにちは、医師の中島です。
早いもので、10月も終わりますね。
11月になると街のあちこちで華やかなイルミネーションが灯り、年末に向かって、アルコールを飲む機会が増える方も多いでしょう。
しかし、アルコールは身体にあまり良くないものだと誤解されているところもあるので、今回はビールの効能についてお話しようと思います。
まず、適量のアルコールは副交感神経に働きかけ、緊張を和らげてくれます。特にビールは麦芽やホップが醸し出す香りや、適度なアルコール度数で適量であれば、よりリラックス効果を得られるお酒です。
1日の終わりにビールを飲めば、仕事や家事などで高ぶった気分をリラックスさせ、休息へ向かう流れを作ることができます。
また、腸内環境を良くするために発酵食品を食べることはご存知の方も多いかと思いますが、発酵して作っているという点では、ビールも腸に良い影響を与えうる発酵食品といえそうですね。
ポルトガルのNOVA医科大学の研究グループは、ビールが腸内細菌にどのような影響を与えるかについての実験を行いました。
この研究では、19人の男性を2つのグループに分け、1つのグループにはアルコール入りのビール、もうひとつのグループはノンアルコールビールを4週間にわたって飲んでもらいました。
その結果、どちらのグループとも腸内細菌の種類が増えていた(多様性が増していた)そうです。
研究グループは、ビールにはポリフェノールなどの健康に良い成分や発酵による微生物が含まれており、それが腸内細菌に良い影響を与えている可能性を指摘しています。
ノンアルコールビールでも効果があったことから、アルコールが苦手な人やお酒の飲み過ぎが気になる場合は、ノンアルコールビールで晩酌するのも良さそうですね。
また、腸内細菌が多様化することで、心臓病や糖尿病などの生活習慣病を発症するリスクが低下するという報告もあります。
さらに、ビールに含まれるホップ化合物が、アルツハイマー型認知症の予防に役立つという研究も報告されています。
しかし、過度な飲酒は健康メリットが打ち消されるだけでなく、高血圧や高血糖、脳卒中などのリスクが高まり、頭頸部がん、乳がん、大腸がんなどのリスクも高まりますので、ご注意を。
※参考までに適度な飲酒量をご確認ください。
厚労省が勧める日本人男性の「適度な飲酒」は、1日平均純アルコールで20g程度。
純アルコール20gは、▼ビール(ロング缶) 1本 (500mL)、▼チューハイ(レギュラー缶) 1本 (350mL)、▼日本酒 1合(180mL)、▼焼酎 1杯 (100mL)、▼ワイン 2杯 (120mL)、▼ウイスキー 2杯 (60mL)に相当する。
なお、女性は男性に比べてアルコール分解速度が遅いことが多いので、男性の半分から3分の2くらいの量が適当とされています。
Lager beer, whether it contains alcohol or not, could help men's gut microbes (米国化学学会 2022年6月15日)
Impact of Beer and Nonalcoholic Beer Consumption on the Gut Microbiota: A Randomized, Double-Blind, Controlled Trial (Journal of Agricultural and Food Chemistry 2022年6月15日)
Beer hops compounds could help protect against Alzheimer's disease (米国化学会2022年11月7日)
いかがでしたか?
節度ある適度な飲酒であれば、様々な効果が期待できそうですね。
次回は「身体に良いビールの飲み方」についてお話します。
週の中日ですね、一息ついて後半も頑張っていきましょう。